FXは「外国為替証拠金取引」のことです。
難しそうな言葉ですが、「外国為替取引」と「証拠金取引」を合体したものに過ぎません。
そして、この内の「外国為替取引」については、あなたはもう学んでいます。
これまでの復習する?
よって、「証拠金取引」についてを学べば、「FX(外国為替証拠金取引)」の大枠を理解したと言えるでしょう。
なお、「証拠金取引」とは「差金決済取引」という取引形態のひとつです。
そのため、このページでは「差金決済取引」についての解説が中心になります。
「差金決済取引」の仕組みを学び、「証拠金取引と呼称される理由」を理解しろ!
それでは早速、いきましょう。
このページの目次
1.必要証拠金と余裕資金
1-1.資金とは?
これまでの解説には「資金」という言葉を用いてきました。
例えば、次のような解説です。
- 米ドル/円=110円のときに10,000米ドルを保有したい場合、必要な資金は1,100,000円。
- 資金100,000円にレバレッジ5倍で、500,000円分の取引をする。
ただ、「資金」という表現はとても曖昧です。
これまでは、理解しやすさを優先して敢えて「資金」という曖昧な表現を用いてきましたが、今後は明確な表現を用いますね。
さて、あなたがFXを始める場合には、FX業者に申し込み、そのFX業者の取引口座を開設することになります。
「資金」とは、この口座に預け入れるお金です。
そして、この資金は2つの内訳から成り立っています。
- 必要証拠金
- 余裕資金(返還可能額、余剰残高などとも呼称される)
順番に解説しましょう。
1-2.必要証拠金とは?
「必要証拠金」は、あなたが他通貨を買う(売る)など、新しく取引を始めるときに必要なお金(円)です。
例えば、米ドル/円=108円のときに、1,000米ドルをレバレッジ5倍で買う場合、いくら必要でしょうか。
108円×1,000÷5=21,600円ですね。
この場合の、21,600円が「必要証拠金」です。
必要なお金だから、必要証拠金なのです。
また、必要証拠金は「担保」としての役割も果たします(詳しくはこのページの後半で解説)。
担保とは、将来生じるかもしれない不利益にそなえ,あらかじめ補填の準備をすること。
出典: コトバンク 担保とは
2-3.余裕資金とは?
「余裕資金」は、あなたのFX口座にある何にも使っていないお金(円)です。
例えば、FX口座に「資金」として100,000円を預け入れ、「必要証拠金」として21,600円を支払った場合、何にも使っていないお金はいくらでしょうか。
100,000円-21,600円=78,400円ですね。
この場合の、78,400円が「余裕資金」です。
「余裕資金」は、返還(引き出し)など自由なお金だから、余裕資金や返還可能額なのです。
このときのあなたの口座残高の内訳は次のようになっています。
2.差金決済取引とは?(ケーススタディ)
ここまでを読んで、「それなら、資金(口座に預け入れるお金)は、必要証拠金と同額の21,600円でいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。
確かにその通りです。
これが、定額商品の売買取引であれば、21,600円ぴったりで過不足は生じません。
例えば、48,000円のスーツを銀行振込で買うときには、48,000円を振り込みますよね。余裕をもって60,000円を振り込むなどという謎の行動はしません。
しかし、FXは「定額の売買取引」ではありません。「差金決済取引」です。
「差金決済取引」だからこその特性について、いくつかのケースに分けて解説します。
※およそ現実的ではないケースもあります。
2-1.利益を確定する場合
次のような取引を例にします。
「米ドル/円=108円」のときに1,000米ドルを買い(必要証拠金21,600円✕レバレッジ5倍)、「米ドル/円=111円」のときに売ったら(決済したら)、いくらの利益が発生するでしょうか。
単純計算ですが、1,000×3円=3,000円の利益ですね。
この取引をまとめると次の通りです。
- 108円のときに1,000米ドルを買った。
- 111円のときに1,000米ドルを売った(決済した)。
- 3,000円が利益確定した。
このときの口座残高の内訳は次のようになっています。
「……ん?」と思うに違いありませんので、このときの資金の増減を補足します。
- 保有していた「ポジション(後述)」を売った(決済した)時点で3,000円の利益が確定し、「余裕資金」に加算。
- 「ポジション」がなくなったため、「必要証拠金21,600円」が「余裕資金」に変わる(担保として預けていた必要証拠金が解放されたイメージ)。
- FX口座にお金を預けているだけの状態になった。
ポジションとは「持ち高(保有している外貨)」のことです。このページの例で言うと、あなたは「米ドル/円=108円のときに買った1,000米ドル」というポジションを持っていたことになります。FX取引を始めれば、いくつかのポジションを持ち、並行して運用していくことになります。
この後に、また同じように「米ドル/円=108円」のときに1,000米ドル(必要証拠金21,600円✕レバレッジ5倍)を買ったとすれば、口座残高の内訳は次のようになりますね。
2-2.小さな損失を確定する場合
次のような取引を例にします。
「米ドル/円=108円」のときに1,000米ドルを買い(必要証拠金21,600円✕レバレッジ5倍)、「米ドル/円=104円」のときに決済したら、いくらの損失が発生するでしょうか。
単純計算ですが、1,000×4円=4,000円の損失ですね。
この取引をまとめると次の通りです。
- 108円のときに1,000米ドルを買った。
- 107円のときに1,000米ドルを決済した。
- 4,000円の損失が確定した。
このときの口座残高の内訳は次のようになっています。
損失した分、口座残高が4,000円減っています。
このときの資金の増減は次の通りです。
- 保有していたポジションを決済した時点で4,000円の損失が確定。
- 損失4,000円が「必要証拠金21,600円」から差し引かれ、必要証拠金が17,600円に減る。
※このように、必要証拠金は「担保」としての役割を果たします。 - ポジションがなくなったことにより、「必要証拠金17,600円」が「余裕資金」に変わる。
- FX口座にお金を預けているだけの状態になった(しかし、資金は4,000円減った)。
2-3.大きな損失を確定する場合
次のような取引を例にします。
※極端な例ですが、あり得ないとは断言できませんよ。
そして、今回はもう少し大きな運用をしてみます。
あなたの資金が800,000円として、「米ドル/円=110円」のときに150,000米ドルを買い(必要証拠金660,000円✕レバレッジ25倍)、「米ドル/円=105円」のときに決済したら、いくらの損失が発生するでしょうか。
150,000×5円=750,000円の損失ですね。
この取引をまとめると次の通りです。
- 110円のときに150,000米ドルを買った。
- 105円のときに150,000米ドルを決済した。
- 750,000円の損失が確定した。
このときの口座残高の内訳は次のようになっています。
ポジションを持ったとき
ポジションを決済したとき
このときの資金の増減は次の通りです。
- 保有していたポジションを決済した時点で750,000円の損失が確定。
- 損失750,000円が「必要証拠金660,000円」から差し引かれるが、そのうえでも90,000円の損失。
- 損失90,000円が「余裕資金140,000円」から差し引かれ、余裕資金が50,000円に減る。
- FX口座にお金を預けているだけの状態になった(しかし、資金は750,000円減った)。
2-4.さらに大きな損失を確定する場合
前記の例は、「必要証拠金(担保)」では損失を補填できず、「余裕資金」まで減少してしまった例でした。
……しかし、「余裕資金」をもってしても損失を補填できないケースも起こり得ます。
(もちろん免除されるわけもありませんから、補填のための資金を用意する必要があります)
3.ロスカット
FX(業者)には、「ロスカット」や「マージンコール」という、顧客(あなた)を不測の損害から守るシステムがあります。
詳細は別の機会に解説しますが、ロスカットとは「あなたが大きな損失を被らないよう、損失が一定額(率)以上になると、ポジションを自動で(強制的に)決済するもの」です。
そのため、ここまでに挙げたいくつかのケースは(事前にロスカットが発動するため)およそ現実的ではありません。
しかし、相場の急変など、取引状況によってはロスカットの発動が間に合わないこともあります。
大切なことは、あなた自身が「レバレッジを活用して取引できるFXには、過当投機(明らかにいきすぎた投機)による大きなリスクもある」ことを知っておくことです。
4.つまり、FXにおける差金決済取引とは?
いくつかのケースを基に「差金決済取引」のイメージを解説してきました。
これをイメージではなく、言葉として定義するなら次の通りです。
- 現物(外貨)の授受を行なわずに、売買したときの差額(利益・損失)だけを決済するもの。
- 差額(損失時)の決済(支払い)を補填するための担保として、「必要証拠金」を預け入れておく必要がある。
- だから「外国為替証拠金取引」と呼称される。
いかがでしょうか。
差金決済取引の仕組み、つまり、FXの大枠を理解していただけましたでしょうか。
FXには大きなリスクもありますが、リスクを大きくするか?小さくするか?は、あなたのやり方次第です。
過当投機(明らかにいきすぎた投機)をしない、堅実なやり方を一緒に学んでいきましょう。
以上、今日は「差金決済取引」と「証拠金取引」について学びました。